世界の発酵食品には何がある?地域によって種類や作り方が違う理由

世界の発酵食品には何がある?

納豆や味噌、ヨーグルトだけが発酵食品ではありません。世界に目を向けると、白い菌糸で大豆を固めたインドネシアのテンペ、酸味のあるエチオピアの主食インジェラ、強いにおいで知られるスウェーデンのシュールストレミングなど、見た目も食べ方も大きく異なります。

面白いのは、同じ原料でも、土地や作り方が変われば別の食品になることです。大豆は日本では納豆、インドネシアではテンペに。魚を使った発酵食品も、タイでは液体調味料のナンプラー、日本の伊豆諸島では干物のくさやになります。

なぜ、土地が違うとこれほど異なる発酵食品になるのでしょうか。世界の発酵食品を比べながら、その土地ならではの背景を見ていきます。

この記事のポイント

  • 世界には、豆・野菜・乳・穀物・魚・いも類などを使った多様な発酵食品がある
  • 同じ原料でも、関わる微生物や仕込み方、保存方法によって完成形は大きく変わる
  • 発酵食品の違いには、その土地の原料や環境、保存方法、食文化が関係している
目次

世界には、どんな発酵食品がある?

世界の発酵食品は、その土地で利用されてきた身近な食材から作られています。代表的なものを、アジア、ヨーロッパ、アフリカなどから見てみましょう。

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国・地域代表的な発酵食品主な原材料特徴
日本納豆大豆納豆菌の働きで、粘りと独特の香りが生まれる
日本・伊豆諸島くさやムロアジ・トビウオなど発酵した「くさや液」に漬けたあと、乾燥させる干物
韓国キムチ白菜・大根など野菜を塩漬けし、主に乳酸菌の働きで酸味が生まれる
インドネシアテンペ大豆カビの白い菌糸が大豆同士をつなぎ、まとまった形になる
タイナンプラー魚・塩魚を発酵・熟成させた液体調味料
コーカサス地方ケフィア乳酸菌、酵母、酢酸菌などが関わる発酵乳
ドイツなどザワークラウトキャベツキャベツを乳酸発酵させた、酸味のある保存食
スウェーデンシュールストレミングニシンニシンを塩水の中で発酵させる保存食
エチオピア・エリトリアインジェラテフなどの穀物発酵させた生地を焼いて作る、酸味のある主食
西アフリカガリキャッサバキャッサバをすりおろし、発酵させる製法では、圧搾・加熱して粒状に仕上げる

発酵食品といっても、納豆やテンペのように豆を食べるもの、ナンプラーのような調味料、ケフィアのような飲み物、インジェラのような主食、魚を保存するくさややシュールストレミングまで、その姿はさまざまです。

では、なぜ地域によってこれほど違いが生まれたのでしょうか。

なぜ地域によって発酵食品の姿が変わる?

発酵食品の地域差は、その土地で手に入りやすい原料、保存や加工に使える塩や水などの資源、微生物が働く環境、受け継がれてきた製法や食べ方など、いくつもの条件が重なって生まれます。

  • その土地でどのような食材が手に入ったか
  • 気温や湿度など、発酵が進む環境がどう違ったか
  • 塩や水など、保存や加工に何を使えたか
  • 主食、調味料、飲み物など、どのような食べ方が定着したか

例えば、乳を食生活に取り入れてきた地域にはヨーグルトやケフィアなどがあり、魚を利用してきた地域には魚醤や魚の発酵保存食があります。

地域ごとの発酵食品は一つの条件だけで決まるのではなく、その土地の暮らしに合わせて発酵の方法も変わってきたのです。

同じ原料でも、発酵食品はここまで変わる

発酵食品は、同じ原料や同じ種類の食材を使っていても、関わる微生物や作り方が違えば、できあがる食品は大きく変わります。大豆と魚を例に比べてみましょう。

大豆:納豆とテンペ

日本の納豆は、煮た大豆に納豆菌が働くことで、特有の粘りや香りが生まれます。一方、インドネシアのテンペでは、加熱した大豆に主にRhizopus属というカビを育てます。白い菌糸が大豆と大豆の間に広がり、全体がまとまった形になるのが特徴です。

同じ大豆でも、働く微生物が違えば、粘りのある納豆にも、切り分けて調理できるテンペにもなります。

魚:ナンプラーとくさや

魚も作り方によって姿が変わります。タイのナンプラーは、魚と塩を仕込み、発酵・熟成させて作る液体調味料です。伊豆諸島のくさやは、魚を発酵したくさや液に漬けたあと、乾燥させて干物にします。

魚を原料にした発酵食品でも、一方は料理に加える調味料に、もう一方は魚そのものを食べる干物になります。原料だけでなく、発酵の工程や食品としての使われ方も、完成形を左右しています。

乳や穀物は、発酵するとどんな食品になる?

大豆や魚だけでなく、乳や穀物も発酵によって味や食感が変わります。世界には、発酵させることを前提に作られている飲み物や主食があります。

ケフィア:乳を発酵させた飲み物

コーカサス地方に起源をもつとされるケフィアは、乳酸菌や酵母などが共存する「ケフィアグレイン」と呼ばれる発酵種を使って乳を発酵させた飲み物です。発酵によって酸味が生まれます。

ヨーグルトと同じく乳を発酵させる食品ですが、伝統的なケフィアでは乳酸菌に加えて酵母や酢酸菌なども関わることが特徴の一つです。

インジェラ:穀物の発酵生地を焼いた主食

エチオピアやエリトリアで食べられるインジェラは、テフなどの穀物粉を水と合わせて発酵させ、その生地を薄く焼いて作ります。表面には小さな穴が並び、発酵による酸味とスポンジのような食感があります。

大きく焼いたインジェラの上に煮込み料理などをのせ、一緒に食べるのも特徴です。穀物を発酵させることが、味や食感だけでなく、その地域ならではの主食の形につながっています。

なぜ遠く離れた土地に「強いにおいの魚の発酵食品」がある?

世界の発酵食品を比べると、離れた地域に意外な共通点が見つかることがあります。伊豆諸島のくさやと、スウェーデンのシュールストレミングです。製法は異なりますが、どちらも魚の保存と深く結びついてきた発酵食品です。

伊豆諸島では江戸時代、塩が貴重でした。干物づくりに使った塩水を捨てずに繰り返し使ううち、魚から出た成分に微生物が作用して発酵が進み、くさや液になったとされています。

シュールストレミングは、ニシンを強い塩水に浸したあと、より薄い塩水で6〜8週間発酵させます。少なくとも16世紀には、魚を保存する食品として知られていました。

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項目くさやシュールストレミング
地域日本・伊豆諸島スウェーデン
主な魚ムロアジ、トビウオなどニシン
作り方の特徴発酵したくさや液に漬け、乾燥させる塩水の中で発酵させる
背景貴重な塩水を繰り返し使う中で、魚の保存方法として発達したとされる魚を保存する方法として発酵が利用された

強いにおいという共通点はありますが、同じ方法で作られているわけではありません。

共通しているのは、冷蔵技術が普及する前の時代に「魚をどう保存するか」という課題に、それぞれの土地の条件に合った方法で向き合ってきたことです。

世界の発酵食品を見ると、その土地の暮らしが見えてくる

同じ大豆でも納豆とテンペに、魚を使う発酵食品でもナンプラーやくさやのように、原料や食材の種類が近くても発酵食品の形は大きく変わります。その違いには、関わる微生物や製法だけでなく、その土地で手に入る食材、保存の必要性、使える資源、食べ方などが関係しています。

世界の発酵食品を比べると、「どんな発酵食品があるのか」だけでなく、「なぜその土地でその形になったのか」まで見えてきます。発酵食品の違いをたどることは、それぞれの地域で人々が食べ物をどう利用してきたのかを知ることにもつながります。

世界の発酵食品についてよくある質問

世界にはどんな発酵食品がありますか?

乳を使ったヨーグルトやケフィア、穀物から作るパンやインジェラ、野菜を使ったキムチやザワークラウト、大豆を使った味噌・納豆・テンペ、魚を使ったナンプラーやくさやなどがあります。このほか、キャッサバなどのいも類を発酵させて作る食品もあります。

なぜ地域によって発酵食品が違うのですか?

その土地で手に入りやすい食材、気温や湿度などの環境、保存の必要性、塩や水などの資源、受け継がれてきた製法や食べ方が関係しています。同じ原料でも、微生物や工程が違えば、できあがる食品の形や味は変わります。

日本の発酵食品は世界と比べて何が特徴的ですか?

日本では、米や麦、大豆などに麹菌を育てた「麹」を使い、味噌、醤油、日本酒、酢などさまざまな発酵食品を作ってきました。温暖で湿度の高い気候風土を生かしながら、麹を利用する発酵文化が育ってきたことが特徴の一つです。

出典

・農林水産省ウェブサイト「aff(あふ)2022年11月号/日本の食文化に欠かせない『発酵』の世界」
https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2211/spe1_01.html

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