【論文解説】植物発酵物(FPP)はアレルギー反応にどう関わるか|スギ花粉症モデルマウスとマスト細胞に着目した研究

【論文解説】植物発酵物(FPP)はアレルギー反応にどう関わるか

植物発酵物(FPP)は、アレルギー反応とどのように関わるのでしょうか。この記事では、2018年と2025年に公表されたマウスや細胞を用いた研究をもとに、FPPを与えたときにどのような違いが見られたのかを紹介します。

研究結果を簡単にまとめると

2018年の研究では、FPPを与えたスギ花粉症モデルマウスで、くしゃみ回数が統計的に少なくなりました。2025年にその理由を探るため細胞とマウスで詳しく調べたところ、アレルギー反応に関わる細胞の働きや反応の強さに違いが見られました。

ここからは、研究の背景や実験の内容をもう少し詳しく紹介します。詳しく知りたい方は、ぜひ続きをご覧ください。

なぜこの研究を行ったのか

植物発酵物(FPP)を継続して摂取したとき、スギ花粉による反応がどのように変わるのかは、十分に分かっていませんでした。そこで2018年に、スギ花粉症モデルマウスを使った研究が行われました。

その結果、くしゃみ回数には違いが見られましたが、IgEなど、免疫の状態を見るために調べた項目だけでは、その理由を十分に説明できませんでした。そこで次に注目したのがマスト細胞です。2025年の研究では、FPPがマスト細胞を介した反応にどのように関わるのかを、細胞とマウスを使って詳しく調べました。

※花粉症などのアレルギーでは、アレルギー反応に関わる抗体の一つ「IgE」と、免疫細胞の一つ「マスト細胞」が関わっています。花粉などの原因物質がIgEを介してマスト細胞を刺激すると、マスト細胞はヒスタミンなどの物質を外へ放出します。この反応を「脱顆粒(だつかりゅう)」といいます。放出された物質が、くしゃみや鼻水などにつながります。

どのように調べたのか

2018年はスギ花粉症モデルマウス、2025年はマスト細胞の反応を調べるモデル細胞とマウスを使って検証しました。

研究主な方法
2018年スギ花粉症モデルマウスにFPP、10倍に薄めたFPP、または生理食塩水を40日間与え、くしゃみ回数やアレルギーに関わる抗体などを調べました。
2025年・細胞実験マスト細胞の反応を調べるモデル細胞(RBL-2H3細胞)を、FPPから水に溶ける成分を取り出した試料で30分間前処理し、その後に抗原で刺激して反応を調べました。
2025年・マウス実験マウスにFPPを5%含む飼料、またはFPPを含まない飼料を64日間与え、IgEとマスト細胞が関わる反応を比べる実験(PCA)を行いました。

研究結果を詳しく見る

スギ花粉症モデルマウスでは、FPP群でくしゃみが少ない日があった

2018年の研究では、スギ花粉のアレルゲンをマウスの鼻に投与し、その後5分間に何回くしゃみをしたかを比べました。FPP群では、生理食塩水群と比べて37日目、38日目、40日目に、くしゃみ回数が統計的に少なくなりました。10倍に薄めたFPPを与えたグループでも37日目には差が確認されましたが、その後は「少ない傾向」にとどまりました。

一方、アレルギーに関わる抗体(IgE・IgG・IgA)には、グループ間で大きな違いがありませんでした。免疫細胞の反応や、免疫細胞どうしの情報伝達に関わる物質についても、大きな差は見られませんでした。つまり、くしゃみ回数には違いがあったものの、今回調べた免疫の項目だけでは、その理由を十分に説明できない結果でした。

マスト細胞に注目する手がかりが見つかった

2018年の研究では、マスト細胞の反応を見るための指標も調べました。FPP群ではこの指標が低い傾向を示しましたが、3つのグループを比べた主な解析では、統計的に明確な差はありませんでした。こうした結果を背景に、2025年の研究ではマスト細胞を介した反応をさらに詳しく調べました。

細胞実験では、マスト細胞が物質を放出する反応の指標が低くなった

2025年の研究では、マスト細胞の反応を調べるためによく使われるRBL-2H3細胞を使いました。この細胞をFPPから水に溶ける成分を取り出した試料で30分間前処理し、その後にアレルギー反応を起こす刺激を加えました。

マスト細胞がヒスタミンなどの物質を外へ放出する「脱顆粒」がどの程度起きたかを見る指標が、FPPの濃度が高くなるほど低くなりました。統計的に意味のある差が確認されています。同じ条件で細胞の生存率は低下しておらず、細胞が弱ったために反応が小さくなったわけではないことも確認されました。

マウスでも、IgEとマスト細胞が関わる反応が小さくなった

2025年のマウス実験では、FPPを5%含む飼料、またはFPPを含まない飼料を64日間与え、その終盤にPCAという実験を行いました。PCAは、IgEとマスト細胞が関わるアレルギー反応の強さを調べるための方法です。耳で起こる反応を、青い色素が血管の外へどれくらい漏れ出すかで比べました。

その結果、FPPを含む飼料を与えたグループでは、FPPを含まない飼料を与えたグループより色素の漏れ出す量が統計的に少なくなりました。

アレルギー反応が起こるまでの細胞の働きにも変化が見られた

2025年の研究では、脱顆粒が起こる前に、細胞の中で何が起きているのかも調べました。マスト細胞が物質を放出するまでには、細胞の中にカルシウムが入ることや、細胞内の物質を運ぶ仕組みが働くことが関わっています。

FPPで前処理した細胞では、刺激後にカルシウムが細胞内へ入る動きが抑えられ、細胞内で物質を運ぶ仕組みにも変化が見られました。つまり、脱顆粒そのものだけでなく、アレルギー反応が起こるまでの細胞内の働きにも変化が確認されたということです。

2つの研究から考えられること

2018年の研究では、スギ花粉症モデルマウスでくしゃみ回数に違いが見つかりました。しかし、IgEなど、今回調べた免疫の項目だけでは、その理由を十分に説明できませんでした。

その疑問を手がかりに行われた2025年の研究では、細胞実験でマスト細胞が物質を放出する反応や、その前に細胞内で起こる働きに変化が見られました。マウス実験でも、IgEとマスト細胞が関わる反応に違いが確認されました。2つの研究を通して、マウスで見つかった現象から、その背景にある細胞の反応へと研究が進みました。

一方で、FPPのどの成分がこうした反応に関わっているのかは、まだ分かっていません。2025年の論文では、原料にもともと含まれる成分、発酵の過程で生まれる成分、または複数の成分が組み合わさって関わる可能性が考えられています。

論文情報

2018年研究

論文タイトル:Intake of a fermented plant product attenuates allergic symptoms without changing systemic immune responses in a mouse model of Japanese cedar pollinosis
著者:Takashi Fujimura, Ayane Hori, Hideto Torii, Shinsuke Kishida, Yoshinori Matsuura, Seiji Kawamoto
掲載誌:World Allergy Organization Journal
発表年:2018年
DOI:10.1186/s40413-018-0213-4
URL:https://doi.org/10.1186/s40413-018-0213-4

2025年研究

論文タイトル:Fermented plant product (FPP) suppresses immediate hypersensitivity reactions with impaired high-affinity IgE receptor (FcεRI) signaling
著者:Tomoki Kodama, Ayana Yokoyama, Yuki Nishioka, Riku Kawasaki, Aiko Teshima, Akira Maeda, Ayano Hojo, Takumi Suizu, Hideto Torii, Kotaro Fujioka, Shinsuke Kishida, Takashi Fujimura, Kenji Arakawa, Atsushi Ikeda, Seiji Kawamoto
掲載誌:Cytotechnology
発表年:2025年
DOI:10.1007/s10616-025-00729-3
URL:https://doi.org/10.1007/s10616-025-00729-3