植物発酵物(FBP: Fermented Botanical Product)を水で薄めてトマトの根のまわりに使うと、青枯病の症状に違いは見られるのでしょうか。本研究では、青枯病菌を接種したトマトを観察し、症状の出方に加えて、病原菌と植物の両方にどのような変化が見られるかを調べました。
※本研究は、広島大学、ミニア大学、万田発酵株式会社の研究グループによる共同研究として実施され、万田発酵株式会社が提供した植物発酵物(FBP)が使用されています。本研究で使用した植物発酵物(FBP)は、果物や野菜、穀類、海藻など41種類の原料を3年以上発酵させてつくられた植物発酵物です。
研究結果を簡単にまとめると
植物発酵物(FBP)とトマトを使った今回の実験では、次のような結果が見られました。
- 青枯病による萎れ(しおれ)が抑えられた
- 青枯病菌を接種する前にFBPを使って育てたトマトでは、FBPのない土に移した後も萎れが抑えられた
ここからは、研究の背景や実験の内容をもう少し詳しく紹介します。
なぜこの研究を行ったのか
青枯病菌は、トマトやナスなど多くの植物に感染することが知られており、農業で問題となる病原菌の一つです。
青枯病への対策として、以前は「臭化メチル」という薬剤による土壌殺菌が行われていました。しかし、臭化メチルはオゾン層を破壊することから使用が禁止され、代わりとなる方法が求められています。
そこで本研究では、青枯病菌の一種である「Ralstonia pseudosolanacearum」を使い、FBPがトマトの青枯病にどのように関わるのかを調べました。
どのように調べたのか
青枯病にかかりやすい品種のトマト苗を使い、FBPを使うグループと、比較のために水だけを使うグループに分けて調べました。
トマト苗の根を、土の入ったトレイごとFBP液または水に2日間浸しました。その後、根のまわりに傷をつけ、その近くに青枯病菌を加えました。その後14日間、トマトがどのように萎れるかを観察しました。
| 項目 | FBPを使って育てたトマト | 水を使って育てたトマト |
|---|---|---|
| 処理の方法 | 苗を育てた土の入ったトレイごと、0.1%、0.25%、0.5%のFBP液に2日間浸した | 苗を育てた土の入ったトレイごと、水に2日間浸した |
| 青枯病菌の加え方 | 根のまわりに傷をつけ、その近くに青枯病菌を加えた | 根のまわりに傷をつけ、その近くに青枯病菌を加えた |
| 調べたこと | 青枯病菌を加えたあと14日間、トマトの萎れ方を観察 | 青枯病菌を加えたあと14日間、トマトの萎れ方を観察 |
さらに、なぜ萎れ方に違いが見られるのかを調べるため、青枯病菌の増え方、トマトの中にいる菌の量、菌が根へ近づく動きなどについても実験しました。
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青枯病による萎れ(しおれ)が抑えられた
FBPを使って育てたトマトと、水だけを使って育てたトマトに青枯病菌を加え、萎れ方を比べました。
水だけを使って育てたトマトでは、接種3日後から一部で萎れが見られ、7日後には多くの株が萎れました。一方、0.1~0.5%のFBPを使って育てたトマトでは、接種14日後に萎れた株の割合が、FBPの濃度が高いほど低くなりました。
FBPが青枯病菌を直接抑えていたわけではなかった
FBPを使って育てたトマトで萎れ(しおれ)が抑えられた理由を確かめるため、FBPが青枯病菌そのものを抑えている可能性を調べました。
0.5%FBPを加えた培地で青枯病菌の増え方を調べたところ、菌は増殖し、FBPを加えていない場合より菌数が多くなりました。この結果から、萎れが抑えられたのは、FBPが青枯病菌を直接弱らせたためではないと考えられました。
症状が出なかったトマトでは、地上部の青枯病菌が少なかった
FBPが青枯病菌そのものを直接抑えていないことが分かったため、トマトの地上部にどのくらい菌がいるかを調べました。
萎れたトマトの地上部には、FBPを使ったかどうかにかかわらず、多くの青枯病菌が見つかりました。一方、FBPを使って症状が出なかったトマトでは地上部の菌が少なく、調べた株の半数以上では、接種10日後にも菌が検査で確認できないほど少ない状態でした。
青枯病菌が根に直接触れても、萎れ(しおれ)は抑えられた
FBPによって青枯病菌が根へ近づきにくくなっている可能性を確かめるため、トマトの根を青枯病菌の液に直接浸して調べました。
菌を根に直接触れさせた場合でも、FBPを使って育てたトマトでは萎れが抑えられました。このことから、今回萎れが抑えられたのは、FBPが青枯病菌を根へ近づきにくくしたためだけではないと考えられました。
事前にFBPを使って育てたトマトでも、その後の萎れ(しおれ)が抑えられた
FBPがトマト側に何らかの変化を与えている可能性を調べるため、あらかじめFBPを使って育てたトマトに青枯病菌を加え、その後はFBPを含まない新しい土へ植え替えて観察しました。
接種14日後に萎れた割合は、水だけを使って育てたトマトでは92%だったのに対し、あらかじめFBPを使って育てたトマトでは55%でした。このことから、FBPを使ったことで、トマト側に何らかの変化が起きた可能性が考えられました。
この研究から分かったこと/分からないこと
今回の研究では、FBPを使って育てたトマトでは、青枯病による萎れ(しおれ)が抑えられました。一方で、FBPが青枯病菌そのものを直接抑えていたわけではありませんでした。
さらに、あらかじめFBPを使って育てたトマトでは、その後FBPを含まない土へ移しても萎れが少なかったことから、FBPがトマト側に何らかの変化を与えた可能性が考えられます。
ただし、FBPによってトマトの中で具体的に何が変化したのかは、まだ明らかになっていません。
論文情報
論文タイトル:Fermented botanical fertilizer controls bacterial wilt of tomatoes caused by Ralstonia pseudosolanacearum
著者:Akiko Hida, Nanako Okano, Chika Tadokoro, Myuji Fukunishi, Asmaa Ali Ahmed, Kohei Takenaka, Yusuke Tateuchi, Kotaro Fujioka, Hideto Torii, Takahisa Tajima, Junichi Kato
掲載誌:Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry 88(5): 571–576
公開日:2024年2月21日
DOI:https://doi.org/10.1093/bbb/zbae016
※本記事は、上記学術論文の知見をもとに、学術情報の紹介・普及を目的として当社が独自に日本語で要約・解説したものです。原著論文の著作権は、著者および公益社団法人 日本農芸化学会/オックスフォード大学出版局に帰属します。実験データの詳細や図表については、原著論文(上記DOIリンク)をご参照ください。

