【論文解説】植物発酵物は飼料の消化にどう関わるか|肥育豚を用いた研究

【論文解説】植物発酵物は飼料の消化にどう関わるか|肥育豚を用いた研究

豚の飼料に植物発酵物(FBP:Fermented Botanical Product)を加えると、栄養成分の消化率に違いは見られるのでしょうか。本研究では、食肉用に育てる豚(肥育豚)を対象に、消化率や体重の増え方、枝肉の重量・格付けを比較しています。

※本研究は、万田発酵株式会社が提供した植物発酵物(FBP)を用いて、栃木県立栃木農業高等学校、東京農業大学、万田発酵株式会社の研究グループにより実施されました。本研究で使用した植物発酵物(FBP)は、果物や野菜、穀類、海藻などのさまざまな原料を3年以上発酵・熟成させてつくられた発酵食品です。

目次

研究結果を簡単にまとめると

通常の飼料を与えた豚(対照群)と、FBPを加えた飼料を与えた豚(FBP群)を比較しました。

  • 飼料中のタンパク質がどの程度消化されたかを推定する「見かけの消化率」は、FBP群の方が高かった
  • 枝肉の格付けはFBP群で高めの評価がみられたものの、明確な差は確認されなかった

この研究では、FBPが豚の飼料中のタンパク質の消化促進に関わる可能性が示されました。一方、枝肉の格付けが高めだった理由は明らかになっておらず、体重の増え方にも明確な差は確認されませんでした。

なぜこの研究を行ったのか

発酵させた素材を飼料に加え、家畜の成長や食肉の品質との関係を調べる研究が行われています。FBPについても、鶏を用いた先行研究で、食べた飼料の量に対する体重の増え方を示す「飼料効率」の改善が報告されていました。

これまでの豚を用いた先行研究では、FBPを加えた飼料を与えた豚で、通常の飼料を与えた豚よりも、ふん便中の大腸菌群の数が少ないことが確認されていました。一方、FBPを加えた飼料で、栄養成分の消化率や枝肉の評価に違いが見られるかは、まだ明らかになっていませんでした。

そこで本研究では、肥育豚を対象に、飼料の見かけの消化率や、成長、枝肉の評価を併せて調べました。

どのように調べたのか

豚12頭を6頭ずつに分け、一方には通常の飼料(対照群)、もう一方には同じ飼料にFBPを加えたもの(FBP群)を与えました。FBPは、小麦の外皮などからなる「フスマ」と混ぜて飼料に加え、対照群にも同じ量のフスマを加えました。

項目試験条件
飼育試験の時期2017年6月下旬〜9月下旬
開始時の平均体重約40kg
FBPの添加割合飼料の0.125%を目安に添加
飼育条件各群6頭を2頭ずつ3組に分けて飼育。飼料と水は自由に摂取

試験終了前の1週間にふん便を採取し、飼料とふん便に含まれるタンパク質・脂肪・繊維を分析して、それぞれの見かけの消化率を推定しました。試験終了後に枝肉の重量と格付けを比較しました。

研究結果を詳しく見る

タンパク質の見かけの消化率が高かった

飼料中のタンパク質量を表す指標「粗タンパク質」の見かけの消化率は、対照群で66.6%、FBP群で70.4%でした。FBP群の方が3.8ポイント高く、明確な差が確認されました。

「見かけの消化率」とは、食べた成分のうち、ふん便に排出されなかった分の割合を推定した数値です。FBP群でこの値が高かったことから、FBPが飼料中のタンパク質の消化促進に関わる可能性が示されました。

なお、同じように調べた脂肪と繊維については、FBP群の方が平均値は高かったものの、明確な差は確認されませんでした。

体重の増え方に明確な差は確認されなかった

試験期間中に増えた体重は、1頭あたりの平均で対照群78.6kg、FBP群78.3kgでした。体重の増え方や飼料を食べた量、飼料効率のいずれも、明確な差は確認されませんでした。

枝肉の格付けはFBP群で高めの評価がみられた

枝肉の格付けでは、対照群の6頭が「上」2頭、「並」4頭だったのに対し、FBP群は「上」2頭、「中」3頭、規格外(大貫)1頭であり、FBP群で高めの評価がみられました。枝肉の重量は両群で明確な差は確認されませんでした。

この研究から分かったこと/分からないこと

今回の研究では、通常の飼料を与えた豚と比べ、FBP群ではタンパク質の見かけの消化率が高いことが分かりました。この結果から、FBPが飼料中のタンパク質の消化促進に関わる可能性が示されました。また、枝肉の格付けはFBP群で高めの評価がみられました。

まだ分かっていないのは、消化率に違いが生じた仕組みや、その違いが豚の成長や枝肉の評価にどう関わるかです。栄養の吸収に関わる腸の小さな突起「絨毛(じゅうもう)」の変化や腸内細菌数の変化が関係している可能性があり、今後その関係について詳しく調べていく必要があります。

論文情報

論文タイトル:植物発酵物が肥育豚のCP,粗脂肪および粗繊維の消化率と枝肉成績に及ぼす影響
著者:鳥居英人、水津拓三、岸田晋輔、塚田正義、祐森誠司
掲載誌:日本養豚学会誌 第58巻 第3号、142–146頁
発行日:2021年9月21日
DOI:https://doi.org/10.5938/youton.58.3_142

※本記事は、上記学術論文の知見をもとに、学術情報の紹介・普及を目的として当社が独自に日本語で要約・解説したものです。原著論文の著作権は、著者および日本養豚学会に帰属します。実験データの詳細や図表については、原著論文(上記リンク)をご参照ください。

目次