【論文解説】植物発酵物は子豚の離乳期にどう関わるか|ふん便とストレス指標を調べた研究

【論文解説】植物発酵物は子豚の離乳期にどう関わるか|ふん便とストレス指標を調べた研究

母豚の乳から飼料へと食事が変わり、飼育環境にも適応する必要がある離乳期は、子豚にとって負担のかかる時期です。植物発酵物(FBP:Fermented Botanical Product)を飼料に加えると、ふん便の状態や、ストレスの指標の一つである毛のコルチゾール濃度に違いが見られるのでしょうか。

※本研究は、万田発酵株式会社が提供した植物発酵物(FBP)を用いて、静岡県立農林環境専門職大学、万田発酵株式会社の研究グループにより実施されました。本研究で使用した植物発酵物(FBP)は、果物や野菜、穀類、海藻などのさまざまな原料を3年以上発酵・熟成させてつくられた発酵食品です。

目次

研究結果を簡単にまとめると

通常の飼料を与えた子豚(対照群)と、FBPを加えた飼料を与えた子豚(FBP群)を比較しました。

  1. FBP群では、毛のコルチゾール濃度が生後50日目の2.00pg/mgから81日目の1.22pg/mgに低下し、明確な差が確認されました
  2. 湿り気のある柔らかな「正常なふん便」の割合は、対照群4.9%に対し、FBP群7.1%であり、統計学的に明確な差は確認されませんでしたが、高い傾向が見られました

毛に含まれる「コルチゾール」はストレスへの反応を調べる指標で、ふん便の硬さや水分の状態は腸の調子を知る手がかりになります。対照群との明確な差は確認されなかったものの、今回の結果から、FBPが子豚の腸の状態やストレスに良い影響を与える可能性が示唆されました。

なぜこの研究を行ったのか

離乳期の子豚は、母豚から離れ、食事や飼育環境の変化に適応しなければなりません。こうした変化に伴うストレスは、下痢や成長の遅れなどと関連しているため、養豚では離乳期の管理が重要です。

これまで、発酵させた素材を飼料に加え、家畜の腸の状態との関係を調べる研究が行われてきました。FBPについても、肥育豚を対象とした先行研究で、FBP群のふん便中の大腸菌群が少なかったことが報告されていました。一方、離乳期の子豚にFBPを与えた場合、ふん便の状態やストレスの指標に違いが見られるかは、まだ分かっていませんでした。

そこで本研究では、離乳前後の子豚にFBPを加えた飼料を与え、ふん便の状態と毛のコルチゾール濃度を調べました。

どのように調べたのか

静岡県牧之原市の養豚場で、8頭の母豚から同じ時期に生まれた子豚を対象にしました。同じ母豚から生まれた子豚が両方の群に入るように分け、通常の飼料とFBPを加えた飼料を比較しました。

項目試験条件
試験期間生後21日目から81日目まで
飼料への添加FBPを0.125%添加
ふん便の観察毎日夕方に、硬さや水分の状態を5段階で記録
毛の採取生後21日目・50日目・81日目の3回

生後21日目はまだ母豚の乳を飲んでいる時期、50日目は別の豚舎へ移って約1週間後、81日目は試験の最終日です。背中の毛を採取し、コルチゾールの濃度を測定しました。

研究結果を詳しく見る

毛のコルチゾール濃度はFBP群で低下した

コルチゾールは、ストレスへの反応を調べる指標の一つです。特に毛に含まれるコルチゾールは、一時的な変化の影響を受けにくく、飼育環境による負担を調べる手がかりになります。

FBP群では、生後50日目から81日目にかけて毛のコルチゾール濃度が2.00pg/mgから1.22pg/mgに低下し、明確な差が確認されました。一方、対照群では1.46pg/mgから1.68pg/mgへとやや上昇しました。

毛を採取した時点対照群FBP群
生後50日目1.46pg/mg2.00pg/mg
生後81日目1.68pg/mg1.22pg/mg

正常なふん便の割合はFBP群で高かった

正常なふん便の割合は、対照群4.9%に対してFBP群7.1%であり、統計学的に明確な差ではないですが、高い傾向が見られました。一方、両群ともふん便の大半は硬く乾いた状態でした。なお、下痢はどちらの群でも確認されませんでしたが、これには農場で予防的に使用されていた飼料中の抗生物質の影響が考えられると論文内で言及されています。

この研究から分かったこと/分からないこと

今回の研究結果から、FBPが離乳期の子豚の腸の状態やストレスに良い影響を与える可能性が示唆されました。

一方、対照群との明確な差は確認されておらず、FBPによる改善が実証されたわけではありません。離乳前の生後21日目に毛のコルチゾール濃度が最も高かったことから、母乳をめぐる競争や空腹が関係した可能性も指摘しています。今後は、授乳期の食事条件とコルチゾール濃度の関係についても詳しく調べる必要があります。

論文情報

論文タイトル:Effect of fermented botanical product on weaning stress in piglets
日本語タイトル:子豚の離乳ストレスに対する植物発酵製品の影響
著者:祐森誠司、水津拓三、鳥居英人、岸田晋輔
掲載誌:日本畜産環境学会会誌 No.21(1)、14–20頁
発表年:2022年
原著論文:https://www.apesj.org/DL/Vol21/Sukemori_2022No21_pp14-20

※本記事は、上記学術論文の知見をもとに、学術情報の紹介・普及を目的として当社が独自に日本語で要約・解説したものです。原著論文の著作権は、著者および日本畜産環境学会に帰属します。実験データの詳細や図表については、原著論文(上記リンク)をご参照ください。

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