豚の飼料に植物発酵物(FBP:Fermented Botanical Product)を加えると、腸内細菌や成長にはどのような違いが見られるのでしょうか。この記事では、ふん便中の菌数と成長を比較した研究を紹介します。
※本研究は、万田発酵株式会社が提供した植物発酵物(FBP)を用いて、静岡県立農林環境専門職大学、栃木農業高校、麻布大学、万田発酵株式会社の研究グループにより実施されました。本研究で使用した植物発酵物(FBP)は、果物や野菜、穀類、海藻などのさまざまな原料を3年以上発酵・熟成させてつくられた発酵食品です。
研究結果を簡単にまとめると
通常の飼料を与えた豚(対照群)と、通常の飼料にFBPを加えて与えた豚(FBP群)を比べた結果です。
- ふん便中の大腸菌群の数は、FBP群の方が少なかった
- 体重の増え方や、飼料を食べた量には、明確な差は確認されなかった
FBP群では、成長に差は見られなかった一方、ふん便中の一部の菌の数に違いが確認されたことで、FBPが豚の腸内細菌に影響する可能性が示されました。
ここからは、研究の背景や実験の内容をもう少し詳しく紹介します。
なぜこの研究を行ったのか
豚の腸内にいる細菌は、飼料に含まれる栄養の消化・吸収や、健康、成長に関わっています。その状態は飼料の内容によっても変わるため、養豚では腸内細菌に着目した飼料の研究が進められてきました。
FBPについても、これまでのラットや鶏を用いた研究から、腸内の状態に関わる可能性が考えられていました。しかし、FBPを与えた動物の腸内細菌がどのような状態になるのかは、十分に調べられていませんでした。
そこで本研究では、FBP群と、対照群の豚のふん便を調べ、大腸菌群やサルモネラなどの菌数を比較しました。
どのように調べたのか
生後3ヵ月の豚12頭を、平均体重と雄・雌の割合が同じになるように、6頭ずつに分けました。一方には通常の飼料(対照群)を、もう一方の「FBP群」には、通常の飼料にFBPを0.125%加えて与えました。
飼育試験は3ヵ月間行い、体重と飼料を食べた量を記録しました。ふん便の検査は、試験開始から2ヵ月後に行いました。ふん便に含まれる菌を培養して菌の数を比べています。
| 項目 | 研究内容 |
|---|---|
| 研究対象 | 3ヵ月齢の豚12頭(各群6頭) |
| 比較した飼料 | 市販の配合飼料/同じ飼料にFBPを0.125%添加 |
| 飼育試験の期間 | 3ヵ月間 |
| 細菌を調べた時点 | 試験開始から2ヵ月後 |
| 主に調べたもの | ふん便中の細菌数、体重の増加量、飼料の摂取量 |
研究結果を詳しく見る
FBP群でふん便中の「大腸菌群」が半減、望ましくない菌を抑え、腸内環境を整える可能性
試験開始から2ヵ月後、ふん便1g当たりの大腸菌群の数を比べると、FBP群の平均値は、通常の飼料を与えた群のおよそ半分であり、明確な差が確認されました。
ほかの細菌数に明確な差はなかった
大腸菌群の検査とは別に、酸素のある環境で育つ菌の数も調べました。平均値はFBP群の方が低かったものの、明確な差は確認されませんでした。
サルモネラは両群で検出されなかった
サルモネラは、今回の検査では、どちらの群のふん便からも検出されませんでした。そのため、FBPによってサルモネラが少なくなるかどうかは判断できません。
成長と飼料摂取量に明確な差なし
3ヵ月間で体重がどれだけ増えたか、飼料をどれだけ食べたかも比べました。どちらの項目も、2つの群の間に明確な差は確認されませんでした。
この研究から分かったこと/分からないこと
今回の研究では、通常の飼料を与えた豚と比べ、FBP群ではふん便中の大腸菌群が少ないことが分かりました。この結果から、FBPが豚の腸内細菌に影響する可能性が示されました。
まだ分かっていないのは、菌数の違いが生じた仕組みや、その違いが豚の健康にどう関わるかです。今回調べたのは限られた菌の数で、腸内環境全体が良くなったかまでは判断できません。今回は一部の菌を調べた段階であり、今後は腸内細菌の全体的なバランスへの影響について詳しく調べていく必要があります。
論文情報
論文タイトル:Effect of dietary supplementation of fermented botanical products (FBPs) on coliform bacteria and Salmonella counts in the swine gut
日本語題目:植物発酵製品の食餌添加が豚腸内の大腸菌群とサルモネラに及ぼす影響
著者:祐森誠司、鳥居英人、岸田晋輔、塚田正義、村上裕信、押田敏雄
掲載誌:Journal of Animal Production Environment Science 19/20(1):56–61
発行年:2021年
原著論文:https://www.apesj.org/DL/Vol18to20/Sukemori_2021.pdf
※本記事は、上記学術論文の知見をもとに、学術情報の紹介・普及を目的として当社が独自に日本語で要約・解説したものです。原著論文の著作権は、著者および日本畜産環境学会に帰属します。実験データの詳細や図表については、原著論文(上記リンク)をご参照ください。

