【論文解説】植物発酵物(FBP)に含まれるEV様ナノ粒子は体重増加や脂質の消化・吸収にどう関わるか|マウスで調べた研究

【論文解説】植物発酵物(FBP)に含まれるEV様ナノ粒子は体重増加や脂質の消化・吸収にどう関わるか|マウスで調べた研究

植物発酵物(FBP:Fermented Botanical Product)の中に見つかった「EV様ナノ粒子」は、体重の増え方や脂質の消化・吸収にどのように関わるのでしょうか。この記事では、EV様ナノ粒子を多く含む試料をマウスに与え、体重増加や便中の脂質量、脂肪を分解する酵素「リパーゼ」の働きなどを調べた研究を紹介します。

※本研究は、岐阜大学と万田発酵株式会社の研究グループによる共同研究として実施され、万田発酵株式会社が提供した植物発酵物(FBP)が使用されています。本研究で使用した植物発酵物(FBP)は、果物や野菜、穀類、海藻などのさまざまな原料を3年以上発酵・熟成させてつくられた発酵食品です。

目次

研究結果を簡単にまとめると

植物発酵物(FBP)を詳しく調べたところ、平均約100nmのとても小さな「EV様ナノ粒子」が確認されました。また、EV様ナノ粒子は、長期発酵の過程で関わる複数の乳酸菌に由来する可能性が示されています。

このEV様ナノ粒子を多く含む試料をマウスに与えた実験では、次のような結果が得られました。

  1. 体重の増え方が小さくなった
  2. 便中の脂質量が増えた
  3. 脂肪を分解する「リパーゼ」の働きが弱くなった

これらの結果から、EV様ナノ粒子を多く含む試料によって脂肪の分解・吸収が穏やかになり、その結果として便中の脂質量が増えた可能性が考えられます。さらに、こうした脂質の消化・吸収の変化が、体重の増え方の違いにも関係した可能性があります。

ここからは、研究の背景や実験の内容をもう少し詳しく紹介します。

なぜこの研究を行ったのか

植物発酵物(FBP)には、発酵によって生まれるさまざまな成分が含まれています。これまでの研究では消化管に関わる変化が報告されていましたが、どの成分が関係しているのかは十分に分かっていませんでした。

近年は、植物や微生物にも存在する非常に小さな粒子「細胞外小胞(EV)」の研究が進んでいます。そこで本研究では、FBPの中にもEVに似た粒子があるのではないかと考え、その存在と働きを調べました。

※その結果、EVに似た特徴を持つ小さな粒子が確認され、本研究では「EV様ナノ粒子」と呼んでいます。

どのように調べたのか

研究では、EV様ナノ粒子を多く含む試料を使い、マウスで2つの実験を行いました。
通常食を与えたマウスでは、主に体重の増え方を調べました。さらに別の実験では、高脂肪・高ショ糖食を与えたマウスを対象に、体重、便中の脂質量、リパーゼの働きなどを詳しく調べました。

項目通常食のマウス実験高脂肪・高ショ糖食のマウス実験
期間3週間(21日間)3週間(21日間)
食事通常食脂肪と糖を多く含む食事
比べたもの通常の水を飲む群/EV様ナノ粒子を多く含む試料を飲む群など通常の水を飲む群/EV様ナノ粒子を多く含む試料を飲む群など
調べたこと体重の増え方、食事量など体重の増え方、便中の脂質量、リパーゼの働きなど

研究結果を詳しく見る

FBPの中に、とても小さな粒子が見つかった

FBPを詳しく調べたところ、平均約100nmのとても小さな粒子が確認されました。「細胞外小胞(EV)」に似た特徴が見られたことから、本研究では「EV様ナノ粒子」と呼んでいます。

EV様ナノ粒子を多く含む試料で体重の増え方が小さくなった

通常食のマウス実験では、EV様ナノ粒子を多く含む試料を飲んだ群で、通常の水などを飲んだ群より体重の増え方が小さくなりました。この差は統計学的にも確認されています。

また高脂肪・高ショ糖食のマウス実験でも明確な差ではなかったものの、同様の傾向として、EV様ナノ粒子を多く含む試料を飲んだ群では、通常の水を飲んだ群より体重の増え方が小さくなりました。

高脂肪・高ショ糖食のマウスで、便中の脂質量が増えた

高脂肪・高ショ糖食のマウス実験では、EV様ナノ粒子を多く含む試料を飲んだ群で、通常の水を飲んだ群より便中の脂質量が増えました。この結果から、食事に含まれる脂質の一部が、体内に吸収されるまでの過程で変化していた可能性が考えられます。

脂肪を分解する「リパーゼ」の働きが弱くなった

リパーゼは、食事に含まれる脂肪を体内に吸収しやすい形に分解する酵素です。高脂肪・高ショ糖食のマウスでは、EV様ナノ粒子を多く含む試料を飲んだ群で、消化管内のリパーゼの働きが弱くなっていました。この結果から、脂肪の分解・吸収が穏やかになり、便中の脂質量が増えた可能性が考えられます。

リパーゼの働きには「フェルラ酸」も関係している可能性

研究では、リパーゼの働きを弱める成分として、フェルラ酸に注目しました。EV様ナノ粒子を多く含む試料ではフェルラ酸が確認され、試験管内の実験では、フェルラ酸そのものにもリパーゼの働きを弱める作用が見られました。

一方で、フェルラ酸の量だけでは、試料によるリパーゼの働きの違いをすべて説明できませんでした。そのため研究では、フェルラ酸以外の成分も関わっている可能性が示されています。

この結果から考えられること

今回の研究では、EV様ナノ粒子を多く含む試料を与えたマウスで、体重の増え方が小さくなる結果が見られました。さらに高脂肪・高ショ糖食のマウスでは、便中の脂質量が増え、消化管内のリパーゼの働きが弱くなることも確認されています。

これらの結果から、EV様ナノ粒子を多く含む試料によって脂質の消化・吸収が変化し、体重の増え方の違いにも関係した可能性を考えています。

今後は、EV様ナノ粒子が腸の中でどのように働くのかに加え、腸を通過して体内に取り込まれるのか、取り込まれた後にどのような働きをするのかなど、さらに詳しい研究が必要とされています。

論文情報

論文タイトル:Extracellular Vesicle-Like Nanoparticles Present in Fermented Botanical Products Suppress Fat Absorption in the Gut
著者:Kotomi Chikama, Koutarou Terada, Chika Yamamoto, Mana Yamamoto, Ayano Hojo, Kotaro Fujioka, Hideto Torii, Lee Wah Lim, Hiroshi Takemori
掲載誌:Journal of Food Science
発表年:2025年
DOI:https://doi.org/10.1111/1750-3841.70518

本記事は、上記原著論文の内容をもとに、学術情報の紹介を目的として日本語で要約・作成したものです。クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際ライセンス(CC BY 4.0)の下で公開・提供されています。(ライセンス詳細:https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/)

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