【論文解説】植物発酵物(FPP)はインフルエンザウイルスにどう関わるか|ウイルスと培養細胞を用いた研究

【論文解説】植物発酵物(FPP)はインフルエンザウイルスにどう関わるか|ウイルスと培養細胞を用いた研究

植物発酵物(FPP:Fermented Plant Product )とインフルエンザウイルスを直接接触させると、どのような変化が見られるのでしょうか。本研究では、ウイルスそのものへの影響に加え、感染した細胞でのウイルスの増え方や広がりについても調べました。

※本研究は、万田発酵株式会社が提供した植物発酵物(FPP)を用いて、広島大学の研究グループにより実施されました。本研究で使用した植物発酵物(FPP)は、果物や野菜、穀類、海藻などのさまざまな原料を3年以上発酵・熟成させてつくられた発酵食品です。

目次

研究結果を簡単にまとめると

植物発酵物(FPP)とインフルエンザウイルスを使った実験では、次のような結果が見られました。

  1. インフルエンザウイルスの感染性が低下した
  2. インフルエンザウイルスが隣り合う細胞へ広がることが抑えられた
  3. 感染した細胞の中でインフルエンザウイルスが増えること自体は、強く抑えられなかった

今回の研究では、FPPは感染した細胞の中でインフルエンザウイルスが増えること自体を強く抑えるのではなく、ウイルスの感染性や、隣り合う細胞へ広がる過程に影響したことが分かりました。

ここからは、研究の背景や実験の内容をもう少し詳しく紹介します。

なぜこの研究を行ったのか

植物由来の成分の中には、インフルエンザウイルスそのものに作用するものや、感染した細胞に作用するものがあることが、これまでの研究で報告されていました。たとえば、柿や緑茶に含まれるタンニンは、インフルエンザウイルスの感染性を失わせることなどが報告されています。

こうした背景から本研究では、植物由来のFPPもインフルエンザウイルスやヒトノロウイルスに作用するのではないかと考え、インフルエンザウイルスとヒトノロウイルスの代替ウイルスへの影響を調べました。

どのように調べたのか

研究では、インフルエンザAウイルスと、ヒトノロウイルスの代替として用いられるネコカリシウイルスを使い、それぞれFPPと3分間接触させたあと、ウイルスの感染性を調べました。また、インフルエンザウイルスについては、感染させた培養細胞にFPPを加え、ウイルスの増え方も確認しました。

項目インフルエンザウイルスネコカリシウイルス
研究に用いたウイルスインフルエンザAウイルスネコカリシウイルス(ヒトノロウイルスの代替ウイルス)
FPPとの接触試験FPPの濃度を0.3%、1%、3%、10%に変え、それぞれ3分間接触させて感染性を確認FPPの濃度を0.1%、1%、10%に変え、それぞれ3分間接触させて感染性を確認
感染細胞を使った試験感染した細胞に濃度の異なるFPPを加え、ウイルスの増え方を確認―

研究結果を詳しく見る

インフルエンザウイルスの感染性が低下した

インフルエンザウイルスに濃度の異なるFPPを3分間接触させたところ、FPPの濃度が高いほど、ウイルスの感染性が低下しました。

3%と10%のFPPでは、インフルエンザウイルスはほぼ完全に不活化され、0.3%と1%でも感染性の低下が確認されました。

ネコカリシウイルスの感染性は低下しなかった

ヒトノロウイルスの代替として用いられるネコカリシウイルスについても、FPPと接触させて感染性への影響を調べました。

インフルエンザウイルスでは感染性の低下が見られた一方、ネコカリシウイルスでは、10%という高い濃度のFPPを使用した場合でも感染性は低下しませんでした。

ウイルスが隣り合う細胞へ広がるのを抑えた

研究では、ウイルスの増え方を、「ウイルスが隣り合う細胞へ広がること」と「感染した細胞の中でウイルスが増えること」に分けて調べました。

インフルエンザウイルスを感染させた細胞にFPPを加えると、ウイルスが隣り合う細胞へ広がることは抑えられました。一方、感染した細胞の中でウイルスが増えること自体は、FPPを加えても強く抑えられませんでした。

この研究から分かったこと/分からないこと

今回の研究では、FPPをインフルエンザウイルスと直接接触させると感染性が低下し、感染した細胞を使った実験では、ウイルスが隣り合う細胞へ広がることが抑えられました。

ただし、FPPがどのような仕組みでインフルエンザウイルスの感染性を低下させたのかは、まだ明らかになっていません。

論文情報

論文タイトル:Inactivation of the Influenza Virus by a Supplemental Fermented Plant Product (Manda Koso)
著者:Toshihito Nomura, Reiko Yoshimoto, Ryoko Kawabata, Toshiki Matsubara, Seika Narai, Kosuke Oda, Masaya Fukushi, Takashi Irie, Takemasa Sakaguchi
掲載誌:Hiroshima Journal of Medical Sciences 66(4): 97-101
発表年:2017年
DOI:https://doi.org/10.24811/hjms.66.4_97

本記事は、上記原著論文の内容をもとに、学術情報の紹介を目的として日本語で要約・作成したものです。クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際ライセンス(CC BY 4.0)の下で公開・提供されています。
(ライセンス詳細:https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/)


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