【論文解説】植物発酵物(FBP)は加齢に伴う変化にどう関わるか|ショウジョウバエで調べた研究

【論文解説】植物発酵物(FBP)は加齢に伴う変化にどう関わるか|ショウジョウバエで調べた研究

植物発酵物(FBP:Fermented Botanical Product)を摂取したとき、加齢に伴う変化にはどのような違いが見られるのでしょうか。この記事では、老化が進みやすいショウジョウバエを使い、寿命や運動機能、筋肉の状態、酸化ストレスへの反応などを調べた研究を紹介します。

※本研究は、京都工芸繊維大学と万田発酵株式会社の研究グループによる共同研究として実施され、万田発酵株式会社が提供した植物発酵物(FBP)が使用されています。本研究で使用した植物発酵物(FBP)は、果物や野菜、穀類、海藻などのさまざまな原料を3年以上発酵・熟成させてつくられた発酵食品です。

目次

研究結果を簡単にまとめると

植物発酵物(FBP)を含む餌をショウジョウバエに与えた実験では、次のような結果が得られました。

  1. 寿命が長くなった
  2. 加齢に伴う運動機能の低下が小さくなった
  3. 筋肉にたまる、不要になったタンパク質などの集まりが少なくなった
  4. 酸化ストレスを与えた条件では、生存率や腸の状態にも一部違いが見られた

これらの結果から、FBPを摂取したショウジョウバエでは、寿命だけでなく、運動機能や筋肉、酸化ストレスに対する反応など、加齢に関わる複数の指標に違いが見られたことが分かります。

ここからは、研究の背景や実験の内容をもう少し詳しく紹介します。

なぜこの研究を行ったのか

食品やその成分の中には、試験管内の実験で「酸化ストレスを抑える働き」が確認されるものがあります。しかし、実際に食べると消化の影響を受けるため、生きた体の中でも同じように働くとは限りません。

植物発酵物(FBP)についても、これまでに酸化ストレスに関わる研究が行われてきましたが、寿命や加齢に伴う変化との関係は、十分に分かっていませんでした。

そこで本研究では、寿命が短く老化研究に使われているショウジョウバエを使い、FBPを含む餌を与えたときに、寿命や運動機能、筋肉や腸にどのような違いが見られるのかを調べました。

どのように調べたのか

本研究では、目的に応じて条件の異なるショウジョウバエを使い、植物発酵物(FBP)を含む餌を与えた群と、含まない群を比べました。寿命だけでなく、運動機能や筋肉の変化、酸化ストレスを与えたときの反応を調べています。

調べたこと主な方法
寿命老化が進みやすいハエに、FBPを含む餌または含まない餌を与えて比較
運動機能筋肉に酸化ストレスがたまりやすいハエに、年齢とともに上へ登る力がどう変わるかを比較
筋肉の変化筋肉にたまる「不要になったタンパク質の集まり」を観察
酸化ストレスへの反応酸化ストレスを与えたときの生存率や腸の状態を比較
Nrf2の働き酸化ストレスへの対応に関わる「Nrf2」という仕組みに変化があるかを確認

研究結果を詳しく見る

老化が進みやすいハエでは、FBP群で寿命が長くなった

寿命の実験では、老化が進みやすいショウジョウバエに、植物発酵物(FBP)を含む餌または含まない餌を与えて比べました。

半数のハエが死亡するまでの時間は、FBPを含まない群では平均5.5日だったのに対し、FBPを含む3つの群では平均6.5〜8.5日でした。時間の経過とともに生き残っているハエの割合を比べても、3つのFBP群はいずれも対照群と統計的に明確な差が確認されました。ただし、FBPの濃度が高いほど寿命が長くなる、という関係は見られませんでした。

筋肉に酸化ストレスがたまりやすいハエでは、運動機能の低下が抑制された

筋肉に酸化ストレスがたまりやすいショウジョウバエに、FBPを含む餌または含まない餌を与え、上へ登る力が年齢とともにどう変わるかを調べました。

どちらの群でも、加齢とともに運動機能は徐々に低下しました。ただし、FBPを含む餌を与えた群では、運動機能の低下の進み方がゆるやかになりました。この違いは、統計的にも確認されています。

筋肉にたまる不要になったタンパク質などの集まりが少なくなった

筋肉に酸化ストレスが溜まりやすいショウジョウバエを使い、不要になったタンパク質などの集まりが、筋肉の中にどのくらい溜まっているかを調べました。

FBPを含まない餌を与えた群では、加齢とともにこの集まりが増えていきました。一方、FBPを含む餌を与えた群では、同じ年齢の対照群よりも少なくなりました。この集まりが増えることは、筋肉の細胞がタンパク質を適切な状態に保つ力が低下しているサインの一つとされています。

さらに研究では、羽化直後からFBPを与え続けた場合だけでなく、羽化後15日(ヒトの中年期に相当)まで通常の餌で育て、その後からFBPを与え始める実験も行いました。途中からFBPを与えた場合にも、筋肉にたまる不要になったタンパク質などの集まりが少ない結果が見られました。

そのため今回の結果は、FBPを含む餌を与えたハエでは、加齢に伴う筋肉の変化が小さかったことを示す結果と考えられます。

酸化ストレスを与えた条件でも、一部に違いが見られた

ショウジョウバエに酸化ストレスを与えたとき、FBPを含む餌を与えた群と、含まない群でどのような違いが見られるかを調べました。

その結果、一部の条件では、FBPを含む餌を与えた群の方が、酸化ストレスを与えたあとの生存率が高くなりました。 また腸でも、細胞へのダメージが少なかった可能性を示す結果が得られました。

研究では、その仕組みを探るために、酸化ストレスへの対応に関わる「Nrf2」についても調べました。しかし、FBPを含む餌を与えることでNrf2が明確に活性化したとは確認できませんでした。 そのため、今回見られた変化がどのような仕組みで起きたのかは、まだ分かっていません。

この結果から考えられること

今回の研究では、FBPを含む餌を与えたショウジョウバエで、寿命や運動機能、筋肉の状態、酸化ストレスを与えたときの反応に違いが見られました。

一方、なぜこうした違いが生じたのか、その詳しい仕組みはまだ明らかになっていません。今後は哺乳類モデルでも同じような変化が見られるかを検証する必要があるとしています。

論文情報

論文タイトル:Lifespan extension and suppression effects of fermented botanical product on the impairment of locomotor activity and accumulation of aggregates containing ubiquitinated proteins in the muscle of Drosophila aging-accelerated models
著者:Dat Tuan Le, Takumi Suizu, Kotaro Fujioka, Hideto Torii, Yoshihiro H. Inoue
掲載誌:Journal of Food Bioactives 28: 59-67
発表年:2024年
DOI:https://doi.org/10.26599/JFB.2024.95028396

本記事は、上記原著論文の内容をもとに、学術情報の紹介を目的として日本語で要約・作成したものです。クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際ライセンス(CC BY 4.0)の下で公開・提供されています。(ライセンス詳細:https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/)

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