【論文解説】植物発酵物(FBP)は腸内環境にどう関わるか|高脂肪食ラットで調べた研究

【論文解説】植物発酵物(FBP)は腸内環境にどう関わるか|高脂肪食ラットで調べた研究

植物発酵物(FBP:Fermented Botanical Product)を摂取すると、腸の中ではどのような変化が起こるのでしょうか。腸内環境というと、ビフィズス菌や乳酸菌などの「腸内細菌」に注目しがちですが、腸の中でつくられる物質や、腸を守る仕組みに関わる成分も大切です。この記事では、高脂肪食を与えたラットを使って、FBPと腸内環境との関係を調べた研究を紹介します。

※本研究は、広島大学、藤女子大学、飯田女子短期大学(現:飯田短期大学)、万田発酵株式会社の研究グループによる共同研究として実施され、万田発酵株式会社が提供した植物発酵物(FBP)が使用されています。本研究で使用した植物発酵物(FBP)は、果物や野菜、穀類、海藻などのさまざまな原料を3年以上発酵・熟成させてつくられた発酵食品です。

目次

研究結果を簡単にまとめると

植物発酵物(FBP)を含む餌を与えたラットでは、対照群と比べて次のような違いが見られました。

  1. 腸に負担をかける可能性がある「コハク酸」は、FBP群の方が低かった
  2. 腸内細菌によって作られ、腸に負担をかける可能性がある「二次胆汁酸」は、FBP群の方が低かった
  3. 腸を守る働きに関わる「IgA」と「ムチン」は、FBP群の方が高かった
  4. 調べた主な腸内細菌の割合には、明確な違いがなかった

今回の研究では、腸内細菌の割合が大きく変わらなくても、腸の中にある物質や、腸を守る仕組みに関わる成分には違いが見られたことが分かります。

ここからは、研究の背景や実験の内容をもう少し詳しく紹介します。

なぜこの研究を行ったのか

腸の中では、腸内細菌だけでなく、そこでつくられるさまざまな物質や、腸の免疫・バリア機能に関わる成分も重要です。これまでの研究では、高脂肪食によって、腸内に蓄積し、炎症を引き起こす恐れのあるコハク酸や、細胞への負担が知られる二次胆汁酸の一種が増えることなどが報告されていました。

また、植物発酵物(FBP)については、これまでの動物研究で腸の状態に関わる変化が報告されています。そこで本研究では、高脂肪食を与えたラットにFBPを含む餌を与えると、どのような違いが見られるのかを調べました。

どのように調べたのか

研究では、雄のラット13匹を2つのグループに分け、どちらにも牛脂を30%含む高脂肪食を3週間与えました。そのうち一方には、FBPを含む餌を与えました。

その後、盲腸の中にある消化物や便を調べ、腸内細菌の割合や、コハク酸などの有機酸、胆汁酸、IgA、ムチンなどを2つのグループで比較しました。

項目研究内容
研究対象雄ラット13匹
試験期間3週間
食事牛脂30%を含む高脂肪食
比較対照群/FBPを含む餌を与えた群
FBP量乾燥重量換算で餌の5%
主に調べたもの腸内細菌、有機酸、胆汁酸、IgA、ムチンなど

研究結果を詳しく見る

コハク酸はFBP群の方が88%低かった

コハク酸は、対照群と比べてFBP群の方が88%低く、明確な差が確認されました。一方、酢酸やプロピオン酸、酪酸、乳酸など、ほかの有機酸には明確な違いがありませんでした。

一部の胆汁酸はFBP群の方が低かった

便中の胆汁酸では、デオキシコール酸がFBP群の方が50%低く、ヒオデオキシコール酸も56%低い値でした。どちらも明確な差が確認されています。一方、コール酸とリトコール酸には明確な違いがありませんでした。

IgAとムチンはFBP群の方が高かった

便中のIgAは、対照群と比べてFBP群の方が約1.9倍高く、ムチンも約3.2倍高い値でした。どちらも明確な差が確認されています。

IgAは、腸の中で異物などから体を守る働きに関わる抗体の一つです。ムチンは、腸の表面を覆う粘液の主な成分です。どちらも、腸の免疫機能やバリア機能に関わっています。今回の研究では、こうした腸を守る働きに関わる成分が、FBP群で高い値を示しました。

この結果から考えられること

今回の研究では、高脂肪食を与えたラットにおいて、コハク酸と一部の胆汁酸はFBP群の方が低く、IgAとムチンは高い値を示しました。これらの結果から、FBPを含む食餌が高脂肪食を与えたラットの腸管内環境に好ましい変化をもたらした可能性が示されました。

ただし、なぜこうした変化が起きたのか、その仕組みや関与する成分はまだ明らかになっていません。ポリフェノールや食物繊維が関わる可能性も挙げられており、今後さらに検証する必要があります。

論文情報

論文タイトル: Supplemental fermented plant product (‘Manda Koso’) reduces succinate and deoxycholate, as well as elevates IgA and mucin levels, in rats fed a high-fat diet
著者:Yongshou Yang, Novita Vivi Sitanggang, Yukako Okazaki, Hiroyuki Tomotake, Kentaro Arita, Takayuki Ashida, Norihisa Kato
掲載誌:Biomedical Reports 3: 787-791
発表年:2015年
DOI:https://doi.org/10.3892/br.2015.506

本記事は、上記原著論文の内容をもとに、学術情報の紹介を目的として日本語で要約・作成したものです。クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際ライセンス(CC BY 4.0)の下で公開・提供されています。(ライセンス詳細:https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/)


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